インプラントコラム

その1本が「インプラント貧乏」の始まりかもしれません。

インプラントは、失った歯を補う方法として
とても優れた治療です。

しかしその場しのぎで「抜けたところに都度1本ずつ」入れ続けると、最終的に10本、20本と本数が増え、費用・手術回数・身体的負担が雪だるま式に膨らむことがあります。

この状態を、ここでは「インプラント貧乏」と呼びます。

大切なのは、“いまの1本”だけを見るのではなく、5年後・10年後を見据えた計画を立てることです。

実際の症例:前歯を次々と失った場合

重度の歯周病などで前歯がぐらつき、1本抜けるたびに1本インプラントを追加すると——

・前歯だけで8本のインプラントに
・費用例:40万円 × 8本 = 320万円
・手術回数:最大8回

金銭的にも身体的にも大きな負担です。これが典型的な「インプラント貧乏」です。

まとめて治療するという選択肢

将来の変化を見越して、最小本数で面を支える設計にする選択肢があります。

例えば前歯部8本を失っていても、4本のインプラントを適切な位置に配置し、インプラントブリッジインプラントオーバーデンチャー(インプラントを支えに固定する入れ歯)でカバーする方法です。

・インプラント:40万円 × 4本 = 160万円
・ブリッジ:約100万円合計 約260万円(※設計・部位で変動)
手術は原則1回
・オーバーデンチャーの場合、さらに費用を抑えられる可能性

費用と侵襲を抑えつつ、治療期間短縮・負担軽減が期待できます。

将来への拡張性:オールオン治療への応用

将来を見越したインプラント治療は、費用やオペ回数を減らすだけではありません。

将来、もし残存歯をすべて失ったとしても、あらかじめ打ったインプラントを土台として活かし
All-on-4/All-on-6(片顎4〜6本でフルブリッジを支える治療)へ
スムーズに移行できるケースがあります。

つまり、「いま1本」ではなく**“将来も見越した位置・本数・角度”**を選ぶことで、長期的な経済性と安定性が両立しやすくなります。

天然歯の価値と、インプラントの前提

まず前提として、天然歯の価値は圧倒的です。

天然歯は歯根膜といわれる、歯根周辺の組織によって咬合力を繊細に感知し、力を分散。
骨や歯周組織に良い刺激を与え、安定を保ちます。

一方、インプラントには歯根膜がありません。メインテナンスを怠ると骨吸収インプラント周囲炎などのリスクが高まります。

—つまり、インプラントは天然歯の完全な代替ではありません。
だからこそ、安易にインプラントを行うのではなく、最小限・戦略的な配置が重要なのです。

1本ずつ積み増す落とし穴

「1本だけだから」と場当たり的に入れてしまうと、後から隣接歯を失ったときに再設計が難しくなります。
(天然歯とインプラントは基本的に連結しません)。

結果として追加インプラントが次々に必要となり、本数も費用も膨らむ……。
“いま欠けたところだけ”を埋める発想が、長期的には患者さんの不利益に繋がることがあります。

トータルで考えるインプラント治療(設計の考え方)

天然歯の保存を最優先(抜歯リスク評価と保存治療を慎重に検討)
ブリッジ/オーバーデンチャーとのハイブリッドで費用・侵襲の最小化
・将来の全顎治療への拡張性(All-on-4/6に移行しやすい配置)
経済面・健康面・将来性のバランスを最初から設計に織り込む

インプラントは「補う」だけでなく、「守る」ための設計が大切です。
歯を失った治療のゴールとしてではなく“再スタート”という視点が、本当の成功につながります。

「骨が薄い」と言われたケースから学べること

「骨が薄いからインプラントはできません」「入れ歯にするしかありません」
──そんな説明を受けたことがある方は、実は少なくありません。

確かに、インプラントを埋めるためには一定の骨の厚みや高さが必要です。

しかし近年では、骨を補う処置(骨造成)によって、
以前なら難しかったケースでも治療の選択肢を広げられる
ようになっています。

骨を“つくる”という選択肢

骨が足りない部分に、専用の材料を使って骨を再生・補う方法があります。
たとえば──

GBR法(骨再生誘導):足りない部分に人工の骨や膜を置き、骨の再生を促す方法

サイナスリフト/ソケットリフト:上あごの奥の空間(上顎洞)を少し持ち上げ、そこに人工骨を入れて骨を増やす方法

これらの処置を組み合わせることで、
「骨が薄いから不可能」とされた場所にもインプラントを埋められる可能性が生まれます。

ただし、“骨造成=必ず成功”ではない

骨を再生する力には個人差があります。
全身の健康状態(喫煙・糖尿病・骨の代謝など)や、体質、材料の種類などによって、
骨のつき方や回復スピードが異なるため、
思ったより骨が増えにくい・再手術が必要になることもあります。

また、骨を多く作るほど手術の範囲が広がり、腫れや痛みも強くなりやすい傾向があります。
そのため当院では、
「必要な分だけ、しかし最小限で」骨を作ることを基本方針としています。

身体への負担を減らす工夫

同じ“骨を増やす”治療でも、
工夫次第で身体への負担を軽くする方法があります。

1回の手術で骨造成とインプラント埋入を同時に行う(※条件により適応を判断)
・骨が少ない部位には**やや細めのインプラント(ナロータイプ)**を使い、
 本数を増やして全体の力を分散する
・手術回数を減らし、治療期間を短縮する設計にする

これらの工夫により、
腫れや痛み、治療の回数、費用をすべて現実的に抑えることができます。

大切なのは「できるだけ少なく、最も安全に」

骨が少ない場合も、ただ“できる・できない”で判断するのではなく、
どこまで安全に骨を補い、どんな方法なら身体への負担を減らせるかを考えることが大切です。

当院では、
・骨を増やす処置が本当に必要か
・同時手術が可能か
・インプラントの配置をどう最適化できるか
を一つずつ検討し、最小限の手術で最大の安定を得ることを目指しています。

まとめ:その場しのぎではなく、未来を守る治療を

インプラントは、正しく計画すれば生活の質(QOL)を大きく高める治療です。
一方で、場当たり的な1本治療の積み重ねは、結果として患者さんの負担を増やすことがあります。

私たちが大切にしているのは——

「いまこの1本」ではなく、5年後・10年後の口腔状態
・将来の全顎治療に移行できる拡張性
経済・身体負担・将来性のバランス
・そして、天然歯を守ることを常に最優先に考える姿勢

インプラントはゴールではなくスタート
「いま失った歯をどう補うか」だけでなく、
**「将来も噛み続けられるか」**を一緒に考えることが、患者さんの幸せにつながると私たちは考えています。

よくあるQ&A

Q. いま1本だけ欠損です。1本だけ入れないほうがいいということ?

A. 1本だけのインプラントが良くないというわけではまったくありません。
将来的な欠損のリスク残存歯の状態を加味して、位置・角度・本数を設計することが大切です。

Q. 骨が薄いからインプラントはできない言われました。諦めるしかないですか?

A. サイナスリフトやGBRなどで可能性が広がる場合があります。造成量を最小限にする設計や同時手術で、負担軽減も検討します。

Q. All-on-4/6は最初から選ぶべき?

A. 症例により適否が異なりますが、まずは今ある歯をどこまで残せるかをしっかりとかんがえさせていただきます。
また、生活背景・ご予算と併せて、段階的に移行できる配置を含めた計画をご提案します。

最後に

私たちは“インプラントを勧めること”が目的ではありません。

「インプラントをすべきでないケース」も含め、正直にお伝えすることを大切にしています。

将来のあなたの口腔内まで見据えた設計を、一緒に考えさせていただきます。

▶ まずは現状把握から

CTによる精密検査とカウンセリングで、あなたにとって現実的で負担の少ない選択肢を一緒に検討します。
無理のない範囲で、ご相談ください。

当院ではインプラント治療の無料相談を実施しております。
・他院で抜歯してインプラントと診断されたけど、歯を残せないの?
・インプラントはしたいけど、費用は抑えたい…
・治療方法や痛み治療期間など、治療の詳細を聞きたい
・どれくらい持つのか、トラブルはないのか 等

些細なことでも、気になることがございましたら、お気軽にご相談にお越しください。

【執筆・監修者】

尼崎駅前歯科 
院長 鷲本 剛

虫歯治療や歯周病治療などの一般的な歯科治療に携わりながら、歯を失った患者様に対する治療にも力を注ぐ。

治療技術、知識の研鑽の為、インプラント治療や矯正治療を専門に扱う様々な歯科医院にて診療を行いながら、国内外の学会や研修会に参加し、最新の技術や知識を学び、所属している大阪歯科大学口腔インプラント科では、専門的な診療や手術に携わる機会を得て、より高度な技術や知識を身に付ける。

現在は、培った知識経験を若手医師の育成のため、歯科医師に向けインプラント治療のセミナー講師も務める。

◇当院のインプラント治療について

https://www.amagasaki.dental/implant/

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